鍼灸はなぜ体に負担をかけずに整えられるのか

鍼灸はなぜ体に負担をかけずに整えられるのか科学的にわかってきた鍼灸治療の仕組み

この記事では慢性的な腰痛がなぜなかなか改善しにくいのか、そして鍼灸がどのように体に負担をかけず腰の不調を整えていくのかを解説します。

レントゲンでは異常がない腰痛や、繰り返し起こる腰の痛みに悩んでいる方に向けて、神経や体の反応という視点から鍼灸を理解する内容です。

鍼灸という言葉を聞いたとき、多くの人が思い浮かべるのは不思議な治療、東洋医学、気の流れといった、少し曖昧なイメージかもしれません。

実際に受けたことがない人ほど、何となく効きそうだけれど理由はよく分からない、そんな印象を持っていることが多いようです。

一方で、現在の鍼灸は、昔ながらの経験や感覚だけで語られるものではなくなってきています。医学や生理学の研究が進み、体の中で何が起きているのかが、少しずつ整理されるようになってきました。

鍼灸が大きく注目されるようになったきっかけの一つは、一九七〇年代に中国で行われた鍼麻酔の報告でした。

手術中に鍼を使って痛みを抑える映像が世界に紹介され、多くの医師や研究者を驚かせました。

ただ当初は、暗示や思い込みの影響ではないかという疑問も強く、本当に体の中で変化が起きているのかは分かっていませんでした。

その後、研究が進むにつれ、鍼刺激によって脳や神経の働きが変化することが確認されるようになります。人の体には、もともと痛みを調整する仕組みが備わっています。

強い刺激やストレスを受けたとき、体内で作られる物質が痛みを和らげたり、脳が痛みの感じ方そのものを調整したりします。

鍼灸は、こうした仕組みを外から無理に操作するのではなく、自然な形で引き出す刺激として働いていることが分かってきました。

つまり鍼灸は、何か特別な力を体に加えているというよりも、体に備わっている回復の回路に、そっとスイッチを入れるような役割を果たしていると考えられています。

ここで大切なのは、鍼灸だけが特別な治療というわけではないという点です。

運動や温熱刺激、電気刺激などでも、同じように体の調整機能は働きます。その中で鍼灸の特徴は、刺激が非常に穏やかであること、そして刺激を加える場所や量を細かく調整できることにあります。

強い刺激を加えなくても体が反応するため、負担が少なく、年齢を重ねた方や体力に不安がある方でも受けやすい治療法と言えます。

慢性的な腰痛や肩こりなどの不調を抱えている人の体を詳しく見ていくと、筋肉や関節そのものよりも、神経の働きが過敏になっているケースが多く見られます。本来であれば問題にならない刺激を強い痛みとして感じてしまったり、緊張が抜けずに体が常に身構えた状態になっていたりします。このような状態では、湿布や痛み止めで一時的に症状が軽くなっても、根本的な改善にはつながりにくくなります。

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鍼灸は、神経の興奮を落ち着かせる方向に働くことが知られています。

皮膚や筋肉にある感覚の受け取り口に穏やかな刺激が入ることで、脳に伝わる信号の質が変わり、体が安全だと認識しやすくなります。その結果として、筋肉の緊張が緩み、血流が変化し、呼吸が深くなるなど、全身にさまざまな反応が起こります。

これらは施術者が意図的に操作しているというよりも、体が自ら調整を始めた結果だと考えられています。

検査では異常が見つからないけれど、不調が続いているという相談は少なくありません。疲れが取れない、眠りが浅い、天候やストレスで症状が変わるといった訴えは、神経のバランスが崩れているサインであることが多いと考えられています。鍼灸は、こうしたはっきりした病名がつかない状態に対しても、体全体の反応を見ながら調整できる点が強みです。

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また、薬を長期間使い続けることに不安を感じている人にとっても、鍼灸は一つの選択肢になります。薬は症状を抑える力が高い反面、体への負担や副作用が問題になることもあります。鍼灸は、体内で起きる反応を利用するため、薬のように蓄積する負担が少なく、他の治療と併用しやすいという特徴があります。

もちろん、鍼灸は万能ではありません。一回で全てが解決する治療でもありません。ただ、体が回復しやすい状態に戻るきっかけを作ることはできます。繰り返す不調や、長く続く痛みに対して、これまでとは違う方向から体を整えるという意味で、鍼灸は現代においても合理的な治療法の一つとして位置づけられています。

当院では、鍼灸を特別なものとして扱うのではなく、体の反応を丁寧に観察しながら使う技術として考えています。

強く刺激すれば効くという発想ではなく、今の体にとって必要な刺激を見極めることを大切にしています。鍼灸は不思議な治療ではなく、人の体の仕組みに沿った静かな調整法です。

そうした考え方のもとで施術を受けることで、初めて鍼灸の良さが実感できると考えています。

腰痛について、症状や考え方をもう少し詳しく知りたい方は、 伊勢崎市で慢性腰痛が改善しにくい理由と当院の考え方 も参考にしてみてください。

よくある質問

Q. 腰痛に鍼灸は本当に向いているのですか。
腰痛の中には、筋肉や骨の問題だけでなく、神経の緊張や体の反応が関係しているものがあります。鍼灸は、そうした腰痛に対して、体が回復しやすい状態を整える方法の一つとして用いられています。

Q. どのような腰痛に向いていますか。
繰り返し起こる腰痛や、マッサージや薬では一時的にしか楽にならない腰痛、検査では異常がないと言われた腰痛などは、鍼灸が合う場合があります。

Q. 腰に直接鍼を刺すのですか。
必ずしも痛む場所だけに鍼をするわけではありません。腰やお尻、下肢など体全体の状態を見ながら、必要な場所に刺激を加えていきます。

Q. 何回くらい通えば腰痛は改善しますか。
腰痛の原因や経過によって異なります。一回で変化を感じる方もいれば、体の状態を整えるために複数回の施術が必要な場合もあります。当院では無理のない通院ペースをご提案しています。

Q. 痛み止めや湿布と併用しても大丈夫ですか。
多くの場合、問題ありません。鍼灸は薬とは異なる仕組みで体に働きかけるため、腰痛治療の一つの選択肢として併用されている方もいます。不安がある場合は事前にご相談ください。

体の反応や腰痛の原因について、もう少し具体的に知りたい方は下記も参考にしてください。

慢性腰痛が改善しにくい理由
https://kunisada-seikotu.jp/blog/isesaki-lowbackpain-reason

腰痛の症状タイプ別の考え方(伊勢崎市の腰痛ガイド)
https://kunisada-seikotu.jp/isesaki-lowerback-pain

自律神経と体の不調の関係
https://kunisada-seikotu.jp/isesaki-autonomic-nerves/

著者プロフィール 飯島 隆行(いいじま たかゆき)

群馬県伊勢崎市『くにさだ鍼灸整骨院』院長

医師に見放され、長い後遺症の経験から、「命の尊さ」と「信じる力」を大切にする鍼灸師。
経絡治療を得意とし、東洋医学の養生法でアドバイスする。

東京自由が丘 脈診臨床研修会所属 認定治療院

飯島 隆行