腰痛はなぜ慢性化するのか 鍼灸刺激のエビデンスに基づく解釈
レントゲンで異常がない腰痛が続く理由
腰が痛いのに、レントゲンやMRIでは「異常なし」と言われた。
それでも痛みや違和感が続いている。
この記事では、鍼灸臨床研究の教科書で整理されている「刺激と神経の理論」をもとに
なぜこうした腰痛が起こるのか、そして鍼灸が体に負担をかけず整えていく理由を解説します。
感覚やイメージではなく、受容器・神経線維・刺激様式という視点から鍼灸刺激を一つの「理論」として理解する内容です。
鍼灸刺激は「ツボ」ではなく「受容器」で考えられている
教科書的解釈では、鍼灸刺激を「ツボを刺激する」「経絡を流す」といった言葉では整理していません。
代わりに用いられているのが
鍼や灸によって、体のどの感覚受容器が興奮するのか
という生理学的な視点です。
人の体の
・皮膚
・皮下組織
・筋
・腱
・骨膜
などには、刺激を感じ取るための「受容器」が数多く存在しています。
鍼灸刺激の特徴はこれら複数の受容器が同時に刺激される点にあります。
鍼灸刺激で関与する主な感覚受容器
教科書的な解釈では、鍼灸刺激に関係する受容器として次のようなものが整理されています。
- 軽い触圧に反応する
低閾値機械受容器(Aβ線維) - 鋭い刺激や侵害刺激に反応する
高閾値侵害受容器(Aδ線維) - 温かさ・冷たさを感じる
温度受容器(Aδ線維・C線維) - 機械・温度・化学刺激に反応する
ポリモーダル受容器(C線維)
さらに近年では、皮膚表面の角化細胞(ケラチノサイト)にも温度や刺激に反応する受容体(TRPV1など)が存在することが分かってきています。
つまり鍼灸刺激は
一本の鍼=一つの刺激ではなく多層的な感覚入力の集合体として体に伝わっています。
C線維とポリモーダル受容器が重要な理由
教科書的な解釈で特に重要視されているのが、C線維とポリモーダル受容器の関与です。
C線維は
- 伝達速度が遅い
- 刺激がじわっと広がる
- 痛みだけでなく違和感・温感・持続感に関与する
という特徴を持っています。
鍼灸刺激では
鋭く速い痛みを伝えるAδ線維よりも
C線維系の穏やかな入力が優位になりやすいと考えられています。
このとき体の中では
自律神経系や内因性鎮痛系といった「調整の仕組み」が働きやすくなります。
なぜ弱い刺激でも体が反応するのか
多くの人は
「強い刺激ほど効果が高い」と考えがちです。
しかし教科書的には
「刺激の強さと体の反応は単純に比例しない」と整理されています。
ポリモーダル受容器やC線維は
- 弱くても
- 短すぎず
- 不快にならない刺激
これらに反応します。
そのため、強く押す・強く矯正するような刺激を使わなくても体の調整系が反応し始める条件が整います。
なぜ「偽鍼」でも反応が出てしまうのか
鍼灸研究が長年難しかった理由として偽鍼問題が挙げられています。
鍼を刺さなくても
- 皮膚への軽い接触
- 表在的な刺激
- 模擬的な鍼操作
だけで、受容器やC線維は興奮してしまいます。
生理学的に見ると
完全に「何も起こらない偽刺激」を作ることが難しいのです。
このため、本物の鍼と偽鍼を比べても差が出にくく
「鍼灸は効かない」という誤解が生じやすくなりました。
これは鍼灸が無効という意味ではなく評価方法が刺激の性質に合っていなかったことを示しています。
STRICTAが必要とされた理由
こうした問題を受けて重視されるようになったのが
STRICTA(鍼灸臨床試験報告基準)です。
STRICTAでは
- 刺激部位
- 刺入深度
- 操作方法
- 刺激量
- 理論背景
- 施術者の熟練度
などを詳細に記載することが求められます。
これは、鍼灸が
「同じように見えて、実は全く違う刺激」
になりやすい治療だからです。
鍼灸が体に負担をかけにくい理由
ここまでの理論を整理すると
鍼灸が体に負担をかけにくい理由は明確です。
鍼灸は
- 単一の強刺激に依存しない
- 複数の受容器を同時に刺激する
- 体の調整系を利用する
刺激だからです。
無理に変えるのではなく
体が自分で整いやすい条件を作る。
それが、教科書的に整理された鍼灸刺激の本質です。
腰痛との関係
レントゲンで異常がない腰痛では
筋肉や骨の損傷よりも、
神経の過敏性が関与していることがあります。
このような腰痛では
強い刺激がかえって悪化要因になる場合もあります。
鍼灸刺激は
神経の過剰な興奮を鎮め
調整系が働きやすい状態へ戻す刺激様式として
こうした腰痛と相性が良いと考えられています。
このような神経系の過敏化や筋緊張の固定化は、当院で多くみられる慢性腰痛の背景にも関係しています。
👉 伊勢崎市の腰痛施術の考え方はこちら
よくある質問(FAQ)
Q. 鍼灸は強い刺激の方が効果が高いのですか?
必ずしもそうではありません。
教科書的には、弱く穏やかな刺激でも、神経や調整系が反応することが示されています。
Q. 痛くない鍼でも体が変わるのはなぜですか?
痛みだけでなく、触覚や温感、C線維系が同時に刺激されるためです。
Q. 鍼を刺さなくても反応が出ることはありますか?
はい。皮膚への軽い刺激でも、生理学的には受容器が興奮します。
Q. 腰痛についてもう少し詳しく知りたいです
腰痛全体の考え方や施術方針については
伊勢崎市の腰痛に対する当院の考え方(腰痛系記事まとめ)もご覧ください。
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