遠いものは一番近く、近いものは一番遠い

遠いものは一番近く、近いものは一番遠い

遠いものは一番近く
近いものは一番遠い

この言葉が浮かぶ時
思考はあまり動いていない

考えた末に出てきたというより
すでに在る感覚を
言葉がなぞっただけに近い

普段あまり意識しないものが
いつの間にか前提になっている
それが無いと
今ここが成り立たないものほど
視界の外に置かれている

反対に
常に触れているはずのものは
確かめようとすると
急に距離ができる

今ここに在るという感覚
それは最も近いはずなのに
説明しようとした瞬間に
手応えを失う

分かっていると思った途端に
分からなくなる

触れているつもりで
決して掴めない

人の判断や反応は
表に見えている部分で
決まっているわけではない

もっと静かな層で
すでに方向は定まっていて
思考は後から
理由を探しているだけのことが多い

選んでいるつもりで
選ばされている
というより
積み重なったものが
自然に表に出ている

遠いものは
考えなくても作用している

近いものは
考えた瞬間に遠ざかる

この距離の反転に気づくと
物事を掴みにいく動きが
少しずつ止まっていく

分からないものを
分からないままにする

説明できない感覚を
説明しないまま置いておく

すると
力を入れていないのに
崩れない場所が残る

広げようとしなくても
密度は勝手に増していく

静かで
動きが少なくて
それでも止まってはいない

遠いものと近いものが
入れ替わったまま
日常は続いていく

気づけば
その歩幅が
いちばん自然だった

著者プロフィール 飯島 隆行(いいじま たかゆき)

群馬県伊勢崎市『くにさだ鍼灸整骨院』院長

医師に見放され、長い後遺症の経験から、「命の尊さ」と「信じる力」を大切にする鍼灸師。
経絡治療を得意とし、東洋医学の養生法でアドバイスする。

東京自由が丘 脈診臨床研修会所属 認定治療院

飯島 隆行

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