【第3回】東洋医学入門 ― 五行論とは何か
はじめに
陰陽論が「二つの対立と調和」で世界を説明するのに対し、五行論は「五つの要素(木・火・土・金・水)」で自然や人体のあらゆる現象を整理します。古代中国の人々は、季節の移り変わりや体の働きを五行の流れとして理解し、医学の基盤にしました。
五行の基本的な考え方
五行論では、すべてのものを「木・火・土・金・水」の五つに分類します。
- 木:成長・発展・のびやかさ
- 火:上昇・温かさ・活動
- 土:安定・調和・栄養
- 金:収斂・整える・冷却
- 水:潤す・冷やす・下へ流れる
自然現象や人体の働きがこれらに対応し、循環していると考えます。
自然と人体の五行対応
季節との対応
- 春=木、夏=火、長夏=土、秋=金、冬=水
五臓との対応
- 肝=木、心=火、脾=土、肺=金、腎=水
このように自然と人体を同じ五行に当てはめることで、体の状態を自然界のリズムに重ねて理解できるのです。
五行の相互関係
五行論には「相生(そうしょう)」と「相克(そうこく)」という二つの循環関係があります。
相生(生み出す関係)
木 → 火 → 土 → 金 → 水 → 木 …
例:木は燃えて火を生み、火は灰となり土を生じる。
相克(抑制する関係)
木 → 土 → 水 → 火 → 金 → 木 …
例:木は土の栄養を吸い取り、土は水をせき止める。
この二つの関係によって、世界は常にバランスを保ちながら循環していると考えます。
医学への応用
東洋医学では五行論を用いて、臓腑の働きや病気の状態を説明します。
- 肝(木)が弱ると、春に不調が出やすい
- 心(火)の働きが乱れると、動悸や不眠に繋がる
- 脾(土)が弱まると、食欲不振や疲れやすさが出る
- 肺(金)が乱れると、咳や呼吸器の不調が出やすい
- 腎(水)が弱ると、冷えや老化が進みやすい
日常生活でのヒント
- 春(木):新しいことに挑戦する季節。体を動かして伸びやかに。
- 夏(火):陽気が盛ん。冷たい物を摂りすぎない。
- 長夏(土):湿気がこもる時期。消化に良い食事を心がける。
- 秋(金):乾燥対策を。呼吸を深める。
- 冬(水):エネルギーを蓄える季節。早寝を心がける。
まとめ
五行論は、自然界と人体をつなぐ「五つの視点」であり、陰陽論と並ぶ東洋医学の根幹です。
- 木・火・土・金・水の要素で世界を整理
- 季節や五臓と結びつけて理解
- 相生と相克の循環関係でバランスを説明
次回は「五行論の医学的応用」をさらに深掘りし、具体的に病気や治療にどのように役立つのかをご紹介します。