第5回 黄帝内経素問 上古天真論篇 ― 男性のライフサイクル 八の倍数でたどる成長と老化
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目次
導入 ― 男性は八年周期で変化する
『黄帝内経』では、男性の体は八の倍数ごとに変化すると説かれています。
女性が七年周期であるのに対し、男性は八年周期。これは生理的な発育や寿命の違いを反映しています。
ここでは、少年期から老年期まで、八年ごとの節目をたどりながら男性のライフサイクルを見ていきます。
第一の節目 ― 八歳(腎気が盛んになる)
八歳で腎気が充実し、乳歯が生え替わり、髪が豊かになります。
体がしっかりしてきて、少年としての成長がはっきり見えてくる時期です。
第二の節目 ― 十六歳(精気が満ちる)
十六歳になると「天癸(てんき)」が至り、生殖能力が備わるとされます。
現代でいう思春期・性成熟期にあたり、男性の体は大人の特徴を帯び始めます。
第三の節目 ― 二十四歳(筋骨が強くなる)
二十四歳になると、筋肉や骨がさらに強まり、体力が充実していきます。
社会的にも自立し、活動が盛んになる時期です。
第四の節目 ― 三十二歳(体の充実のピーク)
三十二歳は、男性の体力・精力の最盛期。
腎精が満ち、髪や歯も強く、活動力に溢れます。
仕事や家庭生活でも中心的な役割を担う年代です。
第五の節目 ― 四十歳(衰えの兆し)
四十歳になると、腎気が少しずつ衰え始め、髪が抜けたり歯が弱くなったりします。
これは加齢による自然な変化の始まりです。
第六の節目 ― 四十八歳(精気の衰退が進む)
四十八歳では、体の精気が衰え、筋骨も少しずつ弱まっていきます。
無理をすれば病を招きやすい年代に入ります。
第七の節目 ― 五十六歳(更なる衰え)
五十六歳では肝気が衰え、動作が鈍くなり、精力も減退します。
ここからは生活の節度がより大切になります。
第八の節目 ― 六十四歳(老年期)
六十四歳で腎気が尽き、歯や髪が抜け落ち、身体的な衰えが顕著になります。
『黄帝内経』はこの年齢を男性の寿命の目安として描いています。
男性のライフサイクルが示すもの
この「八の倍数」の節目は、腎精の盛衰を軸に男性の体が変化することを表しています。
- 精が満ちれば体力や生殖力が強くなる
- 精が衰えれば老化が進む
つまり「腎を養うこと」が男性の健康長寿の鍵であるということです。
現代に活かす視点
- 思春期:過度な夜更かしを避け、成長を妨げない
- 青年期:体力があるからこそ無理をせず、精気を消耗しない
- 中年期:過労やストレスを避け、腎を守る生活を心がける
- 老年期:無理をせず、心身を養うことを第一にする
『黄帝内経』の「八の倍数」の法則は、男性の健康管理や加齢対策に役立つ視点を与えてくれます。
まとめ
男性の体は八年ごとに変化し、六十四歳で腎気が尽きる。これは腎精の盛衰によるものである。
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