野球の投球動作によって引き起こされる肘の障害を「野球肘」といいます。成長期の子どもも起こりやすい肘の痛みを感じる疾患ですが、鍼灸治療を行うことで症状の早期改善が期待できます。
今回は、野球肘の種類や原因について解説し、鍼灸治療による効果についてもご紹介します。
野球肘とは
野球肘とは、投球動作によって肘を傷めてしまうスポーツ障害の総称です。数あるスポーツのなかで野球は肘に負担がかかる投球動作の繰り返しが多く、特に成長軟骨が肘にある小学生から中学生の時期での発症が目立ちます。野球肘が発症したときに見られる主な症状は以下のとおりです。
<野球肘の主な症状>
- ボールを投げるとき、投げた後の肘の痛み
- 日に日に肘の痛みが増す
- 肘を曲げたり伸ばしたりしにくい
- 全力でボールを投げられない
なお、野球肘は大人の方や野球をしていない方でも発症することがあり、炎症を抑えるためには肘の安静が必要です。後ほど野球肘の治療法について解説しますが、鍼灸を取り入れることで症状の早期改善が期待できます。
野球肘の種類
野球肘にはさまざまな種類があり、肘の痛む部位から以下の4つに分類されます。
野球肘の種類 |
代表的な疾患 |
内側型 |
・上腕骨内側上顆障害(リトルリーグ肘) ・上腕骨内側上顆裂離 ・上腕骨内側上顆骨端線閉鎖不全 ・内側側副靭帯損傷 ・尺骨神経障害 |
外側型 |
・離断性骨軟骨炎(上腕骨小頭障害) ・滑膜ひだ障害 |
後方型 |
・肘頭骨端線閉鎖不全 ・肘頭疲労骨折 ・後方インピンジメント |
その他 |
・関節内遊離体(関節ねずみ) ・変形性肘関節症 |
投球動作に伴って肘に痛みを感じたり、肘の曲げ伸ばしがしづらかったりする場合は、野球肘が疑われます。症状が悪化すると、長期的な休養や手術が必要になることもありますので、肘に違和感がある方は早めに受診されることをおすすめします。
野球肘の原因
野球肘の主な原因は、ボールを繰り返し投げることによる肘への過剰な負担です。肘の外側の障害は骨と骨がぶつかり合い、軟骨や骨が剥がれたり傷んだりすることで発症します。
一方で、肘の内側の障害は筋肉や靭帯、腱の損傷・断裂から発症し、また投球によって肘の後方にある軟骨や骨を傷めてしまうことも珍しくありません。肘への負担を軽減するためには、過度なピッチング練習を控えたり、投球フォームを見直したりするといった工夫が必要です。
野球肘の医療機関での治療
医療機関に訪れて野球肘と診断された場合には、以下のような方法で症状の改善を図ります。
<野球肘の医療機関での治療>
- 投球の中止
- リハビリ
- 多血小板血漿(PRP)治療
- 手術
野球肘の治療は、どのような症状であっても「投球の中止(肘を安静に保つこと)」から始めるのが基本です。それでは、上記の4つの治療法について詳しく見ていきましょう。
投球の中止
野球肘は肘への過度な負担が原因で生じる障害ですので、投球の中止と局部の安静が第一選択療法となります。痛みが強い場合、ステロイド注射を打つことで炎症を抑制できますが、短期間での大量投与や長期的な使用は副作用のリスクがありますので避けなくてはなりません。
リハビリ
投球を中止して肘の痛みが引いたら、復帰に向けてストレッチや筋力トレーニングなどのリハビリテーションを行います。また、再発防止の観点からは、肘に負担がかかりにくい正しいフォームを身につけることも大切です。そのため、復帰前には投球フォームの確認も行います。
多血小板血漿(PRP)治療
多血小板血漿(PRP)治療とは、患者様の血液中に含まれるPRPを利用した再生療法です。血液から抽出したPRPを肘へ注射することで、損傷した組織の修復(自然治癒力)が促されます。
手術
野球肘の症状は、肘の安静やリハビリで改善することが多いです。しかし、肘の状態や症状の回線が芳しくない場合には、手術が必要になることもあります。
鍼灸治療の野球肘に対する効果
鍼灸治療とは、身体にある経穴、いわゆるツボに鍼(はり)や灸(きゅう)を行い、症状の軽減や健康の維持・促進を図る治療法です。野球肘の治療法としても用いられており、特定のツボを刺激することで次のような効果が期待できます。
<鍼灸治療の野球肘に対する効果>
- 痛みを軽減する
- 炎症を抑える
- 硬くなった筋肉をほぐす
- 全身を調整する
上記の効果が期待できる理由については、以下で詳しく解説していきます。
痛みを軽減する
鍼灸による刺激は、痛みを緩和する「脳内モルヒネ」を分泌させることが可能という研究結果が報告されています。加えて、鍼灸には自然治癒力を高める効果もあり、肘の痛みを含むさまざまな症状の緩和・改善が期待できるのです。
炎症を抑える
炎症が起きている部位には熱があり、この熱は「刺激」と「充血」によって生じる防御的反応です。鍼灸治療では患部やその近接した部位に刺激を加え、熱の発生源である刺激や充血を取り除くことで炎症の抑制が期待できます。
硬くなった筋肉をほぐす
筋肉が硬くなるのは、交感神経の興奮や循環不足によるエネルギー不足などが原因といわれています。針治療には交感神経活動の抑制や血管の拡張、また灸治療には血行促進の作用があり、硬くなった筋肉をほぐすことが可能です。筋肉の緊張緩和に伴い、関節への負担が軽減されることから、野球肘に対しても鍼灸治療は有効と考えられています。
全身を調整する
鍼灸治療は血流を良くしたり、自律神経を整えたりする効果も期待できることから、全身を調整する施術としても重宝されています。野球肘の症状の改善にも効果的ですが、心身のバランスを整えるのにも効果的ですので、定期的なメンテナンスとして受けることもおすすめです。
野球肘のケアに効果的なツボ
鍼灸は疾患や症状に適したツボに刺激を加え、身体に備わっている治癒力を高める治療法です。野球肘のケアに効果的なツボはいくつかあり、代表的なものとして以下の3つが挙げられます。
ツボの名前(読み方) |
場所 |
期待できる効果 |
少海(しょうかい) |
肘を曲げたときにできるシワの内側の端 |
肘の痛み、めまい、頭痛、手足の冷え、耳鳴りなど |
曲沢(きょくたく) |
肘の真ん中、太い腱の小指側のくぼみ |
肘の痛み、動悸、息切れ、胃痛、嘔吐、精神的な不安など |
鍼灸で見込める効果は多岐にわたりますので、野球肘のケアのみならず、身体や心のバランスを整えたいときに利用するのもおすすめです。
野球肘にお悩みの方は「くにさだ鍼灸整骨院」にお越しください
野球肘は、主に投球の繰り返しによって引き起こされる肘の炎症のことです。成長期の子どもに多く見られる疾患の一つであり、長く放置してしまうと重症化する可能性がありますので、早い時期から治療に取り掛かることが大切です。
「くにさだ鍼灸整骨院」では野球肘に関するお悩みを根本から改善できるよう、一人ひとりに合った施術メニューをご提供いたします。鍼灸には肘の痛みや炎症を抑える効果に加え、身体に備わっている治癒力を高める作用もありますので、症状の早期改善を図ることが可能です。
また、当院では再発防止の観点から、簡単にできる効果的なストレッチの指導などアフターケアにも力を入れております。野球肘を手術以外で良くしたい方、伊勢崎市や太田市などで野球肘にお悩みの方はぜひご相談ください。